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静岡地方裁判所 昭和60年(ワ)564号 判決 1986年7月04日

原告

田村ウタ

原告

藁科すみれ

右原告ら訴訟代理人弁護士

白井孝一

伊藤博史

阿部浩基

被告

株式会社平安閣

右代表者代表取締役

中島清重

主文

各原告と被告との間にそれぞれ雇用契約関係が存在することを確認する。

被告は、原告田村ウタに対し金六三万一七二〇円及びこれに対する昭和六一年一月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を、同藁科すみれに対し金一六〇万七八四〇円及びこれに対する右同日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

被告は、昭和六〇年一二月から昭和六二年五月まで、毎月二五日に、原告田村ウタに対し金八万二九三〇円(ただし、昭和六二年五月は金五万五二八七円)を、同藁科すみれに対し金八万一七四〇円(ただし、昭和六二年五月は金五万四四九三円)を支払え。

原告らのその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを五分し、その一を原告らの、その余を被告の負担とする。

この判決は、第二、三項に限り仮に執行することができる。

事実

第一請求の趣旨

一  主文第一項と同旨

二  被告は、原告田村ウタに対し金一三三万一七二〇円、同藁科すみれに対し金二三〇万七八四〇円の支払及び原告各自に対し右各金員に対する昭和六一年一月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告は、昭和六〇年一二月以降、毎月二五日限り、原告田村ウタに対し金八万二九三〇円を、同藁科すみれに対し金八万一七四〇円を支払え。

四  訴訟費用は被告の負担とする。

五  第二、三項につき仮執行の宣言

第二請求の原因

一  原告藁科すみれは昭和四六年二月、同田村ウタは昭和四九年一一月、それぞれ被告に雇用された。

二  被告は、昭和五八年五月二一日以後の原告らと被告間の雇用契約の存続を争い、原告らの申請で、同年八月一六日に地位保全、賃金仮払仮処分が発せられた後、昭和五九年六月二一日から原告らの就労再開を認めたが、原告らを喪服の手入れや包装等原告らが従前従事していた仕事に就かせず、鉄製の門の開閉、草取り、ガラスふきや床みがきなどの雑用にのみ、見せしめ的に従事させた。そのため原告らは、後述のとおり、身体を痛めて同年七月初旬から欠勤を余儀なくされ、その後原告藁科は昭和五九年八月から、同田村は昭和六〇年八月から就労可能となったが、被告は原告らの再三にわたる就労再開の申入れを拒否している。

三  原告らの賃金は、時間給で、毎月二〇日に締切り、これを当月二五日に支払うこととされており、昭和五七年における一箇月の平均賃金は、原告田村については金八万二九三〇円、同藁科については金八万一七四〇円(ただし、病気欠勤の多かった同年八月、九月分を除いて算定)である。

四  被告は、前述のとおり、原告らのような中年女性には体力的に負担の大きい門の開閉等の雑用にのみ、原告らをあえて従事させ、それにより、原告田村についてはその右腕を痛めさせ、昭和六〇年八月までの通院加療を要するに至らしめ、原告藁科については、その背中を痛めさせて三週間の通院加療を余儀なくさせた。被告の右不法行為による原告らの精神的苦痛を慰藉するには、原告ら各自につき金一〇〇万円をもって相当とする。

五  よって、被告に対し、原告らは雇用契約関係の存在確認を求めるとともに、原告ら各自に対し、昭和六〇年一一月末までの賃金(原告田村については同年八月からの分金三三万一七二〇円、同藁科については昭和五九年八月からの分金一三〇万七八四〇円)及び慰藉料金一〇〇万円並びにこれらに対する賃金支払日の後であり不法行為の日の後である昭和六一年一月一七日から各支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払と、昭和六〇年一二月から毎月二五日に、原告田村については一箇月金八万二九三〇円、同藁科については一箇月金八万一七四〇円の賃金支払を求める。

理由

一  被告は適式の呼出を受けながら本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しないから、請求原因事実を自白したものとみなす。

二1  右事実によれば、原告らの雇用契約関係の存在確認請求及び賃金支払請求のうち本件口頭弁論終結時に既に弁済期の到来している分は理由があり、また右一の事実から認められる本件の諸事情に照らせば、将来の賃金支払請求の内、本件口頭弁論終結時からほぼ一年の後である昭和六二年五月まで(ただし、同月二五日を弁済期とする同月二〇日までの分)の賃金については、あらかじめその支払を求める必要性を肯認しうるから、その請求は理由があるということができる。その後の賃金支払請求については、右必要性を直ちに認めがたい。

2  また、前記一の事実によれば、原告らはその主張に係る被告の不法行為により、精神的苦痛を蒙ったということができ、これを慰藉する金額としては、原告らそれぞれにつき金三〇万円をもって相当とする。

三  以上のとおりであるから、原告らの本訴請求は、雇用契約関係の存在確認と、原告ら各自につき、昭和六〇年一一月までの賃金(原告田村については、同年八月からの金三三万一七二〇円、同藁科については昭和五九年八月からの金一三〇万七八四〇円)及び慰藉料金三〇万円並びにこれらに対する賃金支払日の後であり不法行為の日の後である昭和六一年一月一七日から各支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の各支払、昭和六〇年一二月から昭和六二年五月まで、毎月二五日に、原告田村が金八万二九三〇円(ただし、同年五月は金五万五二八七円)、同藁科が金八万一七四〇円(同右、金五万四四九三円)の月額賃金の各支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当として棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条本文、第九三条一項本文の規定を、仮執行の宣言につき同法第一九六条一項の規定を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 三井哲夫 裁判官 富越和厚 裁判官 松津節子)

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